【一般稽古と選手会】

 二宮館長の著書「静かなる闘志」に「一般稽古で最終的に修得するレベルは、ファイターズ・トレーニングと変わるものではない。」という記述があります。選手会の時にだけ特別な技を学ぶということはありません。
 一般稽古と選手会の違いは密度です。自分の体力に合わせて稽古を続け、ゆっくりと、しかし確実にレベルアップを図るのが一般稽古。自分一人ではこなせないような厳しいメニューに取り組み、自らを追い込むのが選手会であると考えています。
 学校や会社でストレスを抱えることの多い現代です。空手の稽古を通して気持ちの良い汗を流し、リフレッシュできれば素晴らしいことだと思います。一般稽古でバランスよく心身を鍛えること、選手会で困難を克服する経験をすること、いずれも人生を豊かにするという点で甲乙つけがたいものです。

【絆】

 道場にはそれぞれ異なる環境で暮らす人達が、空手という共通の目的を持って集まってきます。そして厳しい稽古を共にすることで、そこには信頼や友情、人間同士の確かな絆が生まれます。様々な事情があっていつか稽古から離れることになっても、この絆が失われることはありません。大会の応援や行事への参加など、仲間と会うことを楽しみにできれば、人生の幅が広がり、日々を生きる力を得ることができます。

【女性と空手】

 道場を訪ねる女性が少しずつ増えてきました。敷居が高いと思われがちな空手ですが、実はとても女性に適した武道です。

“空手の特性”

 空手は基本的に相手と離れた位置で戦う武道です。円心空手の場合はそこに相手を崩したり、タイミングで投げたりする技が加わります。体力的に不利な女性でも正しく技を学ぶことで、確実に強くなることができます。一人での反復動作が多く、自分のペースで稽古に取り組むこともできます。


“美容と健康”

 定期的な運動は健康に大きく寄与します。特に空手の突き、蹴りの動作は身体を引き締める効果が高いものです。全身を大きく動かし、バランスよく鍛えるという意味で空手はとても優れた運動です。姿勢がよくなることによって、姿が美しくなります。稽古を通して声に張りが出たり、自信がついたりもします。武道には心身ともに鍛え、磨き、整える働きがあります。


“護身”

 現実の護身には難しい部分が多くあります。「生兵法は怪我の元」という言葉もあります。ただ、武道の稽古をしっかりとやり込んで、凛とした雰囲気を身にまとった女性はそれだけでトラブルを近づけにくくしています。万一の際に身がすくんでしまうのではなく、よく通る声で周囲に知らせたり、瞬間的に払いのけ素早くその場から走り去ることができれば、そこに空手の稽古が活きていると言えます。人目のある範囲で、相手を制圧する技も空手には数多く存在しています。そうしたものを学んだ上で、無用の危険に遭わないようにすることが真の護身ではないでしょうか。


“自分の居場所”

 女性に限ったことではありませんが、家庭と職場(学校)以外に自分が所属している場(仲間)があるということは支えになります。そこに価値あるものがあり、切磋琢磨する仲間がいればなおさらです。武道の道場とはそういう場所です。元気な時に行く場所ではなく、行ったら元気になるという場所です。


“身体表現・自己表現”

 女性の空手には、男性とは違う動きの美しさが生まれることがよくあります。回転動作や高い位置への蹴り技を始めとして、空手には見る者をはっとさせる美しい動作が数多くあります。自分の思った通りに身体をコントロールできるようになると、とても楽しいものです。自分の身体との対話として動きを磨く、他者との競い合いとして試合を目指す。いずれも日常生活ではできない自分自身の表現です。

【子供と空手】

 子供達が空手を通して学ぶものはたくさんあります。技術や勝敗以上に大切にすべきものが、武道の世界の根底に流れています。以下に道場で配慮している点を記します。

“礼儀と挨拶”

 稽古の中で「押忍」、「お願いします」、「ありがとうございました」という言葉を何度も口にします。姿勢良く立って、はっきりと大きな声で返事や挨拶をすることが大切です。家庭・学校・社会の中で使う表現は変わりますが、一度身につけた礼儀や挨拶の習慣はその後の人生の大きな助けとなります。


“我慢の心 思いやりの心”

 息を切らしてミットを打つ、組手で相手と突き蹴りを交わす、帯下の相手に動きを教える、これらの経験は我慢する心、思いやりの心を育みます。ともすれば自分を中心にして世界を捉えがちな子供達に、他者との関係を学ばせる場として武道の道場の役割は大きなものだと思います。


“丈夫な身体”

 空手は全身を左右均等に使う運動です。そして柔軟性、筋力、瞬発力、心肺機能全てを高めていく効果があります。特別な道具を使わないので、身体に過重な負担をかけずに鍛えることができます。入門時と見違えるほどたくましくなっていった子供を、これまでに何人も見てきました。


“現実との接点”

 空手の稽古は現実との戦いです。指導者がきちんと見守っている範囲で、苦しさ、怖さ、痛さを乗り越えなければならない瞬間もあります。成長はとてもゆっくりです。けれどもそのようにして得た実力は本物です。たやすく失われるものではありません。幼少期から仮想の世界に触れることの多い時代だからこそ、現実と向き合い、自らを高める場として、空手の稽古には価値があります。


“自信と誇り”

 武道を学んだ経験は生涯の宝になります。そして日本文化としての空手は国際交流の場において、高く評価されています。自国の文化を他国の人に示せるようになると、その人の活躍の舞台が広がります。また、稽古を通して心身が強くなると自信が生まれ、他者に対する優しさも持てるようになります。たとえ稽古から離れても、人生の中に生き続ける空手であってほしいと願っています。

【若者と空手】

 気力、体力の充実した若者にとって、格闘の技術を学び、肉体を強くしていく空手は魅力的なものです。パワー、スピード、テクニック、強さの追求という点では、若い世代の空手は最先端に位置するものです。地方大会から全日本大会、世界大会と、大きな舞台での戦いを目指して厳しい稽古に取り組み、マットに上がる姿からは若者の可能性を感じます。多くの方を感動させる場面も生まれます。
 大会という場を離れても、空手を通して身につける体力や礼儀正しさ、そして心は、学校や会社でも必ずその人を支えます。柔道で言う「精力善用」としての意味もあります。
 身体がたくましくなり、技が身についていく充実感。自分が確実に変わっていくという手応えと自信。大会で味わう勝つ嬉しさ、負ける悔しさ。自分を支えてくれる周囲の人への感謝。厳しい稽古に取り組んだ者が身につける心のゆとりと、他者への優しさ。同じ道を歩む世界中の仲間との絆。稽古をすればするほど、はるかな行き先が見えてくる武道の奥深さ。日常生活ではなかなか得ることのできないものが、空手の世界にはたくさんあります。
 これらはどの年齢の方も等しく手にすることができますが、若いうちに出会っておくと、より感動が大きいものです。

【壮年以降の空手】

 現在、東京支部・埼玉支部・神奈川支部では40歳以上で稽古に取り組んでいる方が大勢おられます。全くの初心者から始めた方も、他の武道の長い経験がある方もおられます。50歳代で空手を始め、大会に出場するまでになった方。60歳代で入門し、稽古を通して良い汗を流している方。皆さん、豊かな人生経験を反映して様々な空手とのつき合い方を持っておられます。そして、どの方も空手を通して生活に張り合いを感じたり、体力や健康を保っているという点は共通しています。

“まずは健康のために”

 年を重ねると共に、身体の衰えを感じることは自然なことです。スピードやスタミナが失われるとか、高い蹴り、瞬間的な技が出にくくなるだけではなく、日常生活の中で「年を取った」ことを感じる場面が出てきます。けれども稽古をきちんと続けることで、年齢による衰えを少なくすることはできます。稽古を通して若者以上の気力・体力を維持している仲間はたくさんいます。


“指導者として”

 年齢を重ねた方はより多くの人生経験を積んでいます。そうした視点から道場に通う若者達に、「人生の先輩」としてアドバイスできることはたくさんあります。
 また、稽古を長く続けるうちに技の引き出しが増し、応用もきくようになります。そうして身につけた技術や知識を、後輩に伝えることはとても大切なことです。世代を超えた信頼関係も育まれます。


“達人への道”

 武道の世界には「老いてなお素晴らしい強さを持つ」達人が存在しています。それは長年の厳しい鍛錬が可能にするもので、たやすくたどり着ける境地ではありません。
 けれども正しい稽古を地道に続けることで、そこに近づくことはできます。円心空手の「捌き」はそういった意味でも優れたものです。年齢に関わりなく、追求する価値があるものだと思います。

【審査】

 入門者はまず初心を表す白帯(無級)を締めて稽古を始めます。その後、審査を経て橙帯(十・九級)・青帯(八・七級)・黄帯(六・五級)・緑帯(四・三級)・茶帯(二・一級)と昇級し、やがて黒帯(初段)に挑む日を迎えます。大会で優れた成績を収めた場合や、十分な力量がありかつ出席状況が極めて優良な場合、飛び級が認められることもありますが、その基準はとても厳しいものです。強さや技術だけではなく、武道を学ぶ者としての礼儀作法や立ち居振る舞いも求められます。
 審査には普段の稽古とは異なる緊張感が伴います。基本、型、組手と級が上がるごとに求められるレベルは高くなっていきます。このハードルを乗り越えることで初めて昇級し、上の帯を締めることが許されます。
 空手の動きがとりあえず身についた段階で白帯から色帯へ進みます。色帯は質(精神・技術)と量(体力・経験)を高めていく段階です。黒帯(初段)取得は登山において最初の山頂に到達するのに似ています。展望が開け、自信がつき、そして更に連なる山々が視野に入ってきます。そこに辿り着いた人にしかわからないものが見えてきます。
 長く厳しい道のりですが、空手を始めた皆さんには、是非、黒帯取得まで頑張ってほしいと願っています。

【大会】

 円心會館では大会を「修行の為のもの」と位置づけています。大会という具体的な目標は、より厳しく苦しい稽古に取り組むモチベーションになります。大会出場を決めてから試合場に上がるまでの精神の葛藤は、日常生活の中では決して経験できないものです。それを乗り越えた人達は、例外なく大きく成長しています。大会へのチャレンジは生涯忘れ得ない宝物を与えてくれます。
 大会はルールに従って行われます。その中で全力で戦う経験を積むことは、ルールに縛られない武道本来の戦いにも、必ず活かされるものです。

【自主トレーニング】

 道場に来られない時には、時間を見つけての自主トレーニングも必要です。中心はロードワークとストレッチ、補強です。特別な器具を用いなくてもできる、基本的なメニューを以下に記します。きちんと取り組んで約1時間の内容です。この他に基本や型を行えば立派な稽古になります。

“ロードワーク”

 3kmもしくは15分。気持ち良く走れるコースを見つけることが継続のコツです。体調の良い時は途中にダッシュを入れる、疲れがたまっている時はゆっくり流すなど、変化をつけて構いません。


“ストレッチ”

 稽古前のストレッチを基本に、ブリッジや蹴りのフォームを使った動的ストレッチも有効です。柔軟性を高める為には、無理のない範囲で一つの姿勢を維持するやり方が効果的です。その間、決して呼吸をとめないよう気をつけて下さい。


“補強”

 ネックフリクション・拳立て・懸垂・腹筋・背筋・カーフレイズ・スクワットの7種目。ここにバービを入れると全身の協調性が高まります。それぞれにバリエーションがありますが、それは道場で学んで下さい。10回~50回位までセットの数をこなす方法と、30秒~3分位まで時間を決めて動き続ける方法とがあります。
※回復時間を考えると、週に2~3回自主トレーニングを入れると最も効果が上がります。

【支部合宿・滝稽古】

 春から夏の大会シーズン終了後に、支部合宿・滝稽古を行います。日常を離れた空間で過ごす時間は、素晴らしい経験になります。山の涼しい空気の中での稽古、温泉や宴会での仲間との語らい、清冽な渓流での基本や組手、そして滝行は、とても楽しい思い出を残してくれます。自然の中での稽古は道場とは全く感覚が違うものです。滝の水に直接打たれるとその冷たさ、水圧の強さに驚くと思います。試合に向けて追い込んだ人にとっては、心と身体をリフレッシュさせる効果も期待できます。よく晴れた日の滝、梅雨時の増水した滝、毎年その姿を変える滝を訪れることは心躍ることです。

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